子どもの頃、ゆったりとした時間のなかで小さな生き物を見つけたり、野草を手にとって遊んだりしましたね。私達は身近にある自然から何かを学び、心を育ててきたのかもしれません。「子どもの心を育めるような庭をつくりたい」という想いから、こちらの計画は始まりました。
お打合せを重ねるうちに、F様ご夫妻は芸術への造詣が深く、建築、庭、そして風景へのはっきりとした趣向があることが分かりました。丘陵に金平糖をちりばめたような可愛い花達、また、静かな森の空気感もお好きとのこと。ご夫妻の記憶や思い出といった心の風景に「子どもの心を育む」という夢を添えることが、重要なデザイン課題となりました。
また、大切にしたのは次の3点です。
①ご主人が設計された建築。シンプルな空間構成と統一された室内外の要素(素材、色、カタチ)
②室内の絵画、図書、そしてスパイス的に使われているインテリアの色彩
③「意図的でない自然なデザイン」というご要望。つまり、空間構成から構造物、植栽、全てにおいて、「造りました!感」のないデザイン。「石をたてんことまづ大旨をこころうべき也.....)『作庭記』(平安時代の書物)の世界。
結果的に、とてもシンプルな庭構成を提案することになりました。「境界をもたないデザイン案は住まい手によっては拒否されるかもしれない」可能性がありましたが、すんなりと受け入れていただくことができ、玄関へのアプローチ、プール遊びもできるユーティリティスペース、そして室内から眺める庭が一体化し、使い手によってその役割が変化する庭ができました。
↑施工前は、管理を少しでも休むと芝生が荒れてしまい、庭としては使わていませんでした。お客さまは「通るたびに、憂うつな気分になっていた」そうです。写真AとA'は同じ位置から撮影しました。
アプローチ階段をあがると、雑木(アオダモ、ツリバナ等)が出迎え、奥には、森の空気感を演出する深い緑の常緑樹があります。既存のネムノキは撤去しましたが、ヤマボウシ、ヒメシャラ、オオデマリは移植することにしました。1階の図書コーナーからは小さな花が咲く緩やかな丘が見えます。嬉しい驚きは、景石や飛び石がお子さまの腰掛けや遊び場になっていたこと!
竣工後、奥様からお手紙を頂戴しました。「今はまだ1歳くらいのこのお庭が、子どもと共にどんなふうに育っていくのか、これからが本当に楽しみです」と。ご夫妻の想いから生まれた庭が、お子さまにとっての思い出、そして風景のワンシーンとなりますように。
写真&編集 協力:miffy san
以前は庭のスペースがほとんどなく、駐車用のコンクリート土間が大半を占めていました。植物の手入れにあまり時間をかけられないけれど、庭がほしい、そして西日をどうにかしたい、とのご要望でした。道路側にある和室の掃き出し窓が南西向きなので、西日対策は重要課題となりました。
新しく庭空間をつくるために、以前の駐車スペースは最小限にし縦列駐車に変更。そして、庭の自然を身近に感じられるように、デッキを設けました。そして、西日対策のために、庭と駐車スペースの間には既存の生垣を移植し大きめの落葉樹を植えました。
以前からあった資材は新たに土留めや、延段として再利用し、草花はシンボルツリーの足元に移植。再利用した石や植物のおかげで、施工直後からも庭に落ち着きがでました。資材の再利用はリノベーションの醍醐味だといつも思います。
デッキのある庭では、お茶やBBQをしたり、ゴロンと横になり新聞を読んだり、空模様を眺める、といった楽しみができたそうです。
「狭くても庭のデザインは出来ますか?」というお問い合わせから始まった庭づくりです。
ご要望は、
「自然の中にいるかのように感じられる庭」
「ワンコ達とも一緒に庭にでられるようにしたい」ということでした。
玄関、廊下、リビングの窓がコの字に中庭を囲んだ建物なので、それぞれの室内からの眺めを大切にし、ご要望を叶えるデザインにしました。
以前の中庭は芝生があり、椅子をだしてリラックスタイムを過ごしておられたそうです。しかし、雑草がはえてくると手入れも大変になってしまった、とのこと。私が初めてお会いした時は、植えて数年のキモッコウバラとブルーベリーがあり、地面はほぼ土だけ、という状態でした。
外まわりについてのご要望もありましたので、道路に面した中庭の既存フェンス、玄関ポーチから中庭にはいる扉(ガーデンゲート)、駐車場目地も合わせて提案しました。
道路側のフェンスは隙間のないものに取り替え、ガーデンゲートもワンコ達の動線に合うように変更しました。その結果、既存のデッキや玄関ドアとの色調が合い、統一感のある外観になりました。駐車場の既存目地は芝生だったのですが、手入れが追いつかないほど生長するため、9割を砂利にして、残り1割を乾燥に強い植物にしました。