一番気持ちのいい場所をリビングにしよう、と更地の状態から現場に関わることができた例です。緑豊かな周辺の眺めを室内に取り込みながらも、新築の建物、外構、そして庭がその土地の風景に馴染んでゆくイメージが出発点となりました。
建物は道路よりも2m程高い位置にあるので、リビングは明るく、眺めがよく開放的でした。ただし、その部屋の窓際では、道路の通行人からの視線が気になりました。
<ご依頼の経緯>
新築の家の完成2ヵ月前、工務店の外構プランを受け取り、高木がびっしりの植栽計画に、将来自分でメンテナンスできるのか、茂りすぎてご近所迷惑にならないかなど不安を感じて質問したところ、納得できる回答を得られなかったそうです。
そこで、専門家の意見を聞こうとネット検索し、当事務所のホームページに出会ったとのことでした。施工例やプロフィールなどから好きなものが合いそうだと感じ、電話で問い合わせてくださいました。その後、進んでいた外構プランに待ったをかけて、当事務所に依頼をしていただきました。
施主様の庭・外構づくりへの強い気持ちを感じ、希望を実現させたい、と思いながらデザイン・設計・施工(現場でのデザイン監理)に取り組みました。
<ご要望>
※道路と玄関の高低差は約1mですが、足場のような仮の階段だけで、小さなお子様には心配な状態でした。
※施工開始1ヵ月前に木製階段を仮設。「安心して昇り降りできる」と喜ばれました。
<植栽のご要望>
<提案イメージ>
施主様からいただいた風景写真をもとにお客様をおもてなしするようなストーリーを考え、イメージスケッチを描きました。
道路から見えるのは、山荘を思わせる明るい緑に囲まれた外観、門柱にある小さな花壇、渓谷のような外階段。階段をのぼると玄関ドアが見え、その奥には深い緑のある落ち着いたプライベート空間がある。暮らし方や植物との関わり方など施主様のこだわりを大切にしました。
芽吹き、新緑、木陰、紅葉、樹木のシルエット等、自然の中にいるような特別な時間をもてます。
<提案内容>
お問い合わせ時には、庭から玄関への階段は未設置でした。階段だけではなく、建物との統一感ある外構や庭のデザイン提案をしました。
After↓
建物とマッチした外構、そして自然な雰囲気の庭を目指しました。
家に帰ってきたときにホッとできる緑の空間を大切にしたデザインにしています。
建物は角地で、道路より高い場所にあります。周りに遮るものがない為、人の目が気になり落ち着かない状態。
After↓
緑が見えると、室内の窓際に安心感がうまれます。前庭ができたことで、建物のよさが一層引き立ちました。
<構造物のこだわり>
【門柱】杉板目のRCの門がモダンな中にぬくもりを感じさせる印象的なデザイン。シンプルな門柱ですが、実は手間と時間のかかる手法で作られています。
【階段と手すり】石を使ったシンプルでシャープな印象の階段が好みとのことでした。建物全体と外構バランスを考慮して、最初のイメージを反映させた(蹴込みのある)シンプルでシャープな階段を提案しました。手すりは、玄関ライトや室内の階段とリンクさせるように黒のアイアンを採用。味わいあるアイアンの手すりを制作できる会社に依頼し、1ヵ月ほどかけて作りました。
【玄関から階段までの「洗い出し」】
モダンな建物との統一感をだすため、本来の洗い出しのブツブツ感や石の大きさを控えめにしました。砂利は角がとれた丸いものを使い、お子様が怪我をしないように配慮しています。
【木製フェンス】公園や隣家が近いため、独立した空間を確保できるように木製フェンスを設置。人の目が気にならず、落ち着いた雰囲気となりました。幅を少し狭くしモダンな印象に。風が通るようにほどよく隙間を空けています。
【洗い場と蛇口】
庭の一部のような洗い場に仕上げ、蛇口はデザイン性のあるものを提案し、施主様が最終決定されました。
【前庭の石】
元が粘土質の土のため、植物を育てる目的で起伏ある地形にしたので、土が流れないように土留めとして石を採用。景石として馴染むようなデザインにしました。石を足場にして奥に入り、植物を手入れしやすくなっています。
<植栽のこだわり>
高木 H3.0-2.5 3種類
中木 H1.8-2.5 3種類
低木A H0.4-1.6 20種類
低木B<H0.6&草花 23種類
ツルもの:2種類
地被類:21種類
球根:1種類
<植物を一部ご紹介>
【ヤマボウシ】
・メインのシンボルツリーには、伸びやかな美しい樹形を選びました。春に花が咲き、赤い実がなり、美しく紅葉します。建物とのバランスは、5Mが将来の理想高で、2階から花を見られるようになります。
【アオダモ】
・メインのヤマボウシに添う、しなやかな樹形を選びました。建物や外構の強い直線の印象を優しく包み、玄関から道路への視線を少し遮るように配置しました。
【ジューンベリー】
・ご要望があったジューンベーリー、オリーブ、レモンは収穫も目的として、敷地内の日当たりのよい場所に植えてます。施主様が楽しい!と感じ、愛着をもって育ててもらえる庭になると嬉しいです。
【プライベートガーデン】
・奥にあるプライベートガーデンは、明るい日陰に耐える常緑樹を多くし、ところどころ季節感ある草花や花木を配置しました。濃い緑を背景に、明るい緑の葉や花が咲き、切花にも使える植物を間近で楽しめるような空間にしています。
<施主様の感想>
庭で季節を感じられるのはいいですね。庭が完成した2月下旬は何もない状態でしたが、春になるにつれて、どんどん葉っぱが出てきて楽しかったです。子どもは虫を捕ったり、ベリーをつまんで食べたりしています。
現在は在宅ワークが増えて家に居る時間が長いので、植物を手入れする時間が気分転換になっています。楽しめる範囲で、自分でアレンジもしたいと思います。
大きな花の植物がないので花がらを気にせずにすむなど、お手入れのラクなものを選んでいただいたことも良かったです。